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吠えやイタズラ、無視したら治る!の落とし穴【犬のしつけ】

  • 執筆者の写真: くどう まやか
    くどう まやか
  • 2024年4月8日
  • 読了時間: 7分

更新日:7月12日


犬の幼稚園

こんにちは!大阪市福島区のoluolu dog school、ドッグトレーナーの工藤です。


昨今、いろーんなところでワンちゃんのしつけ方のブログや動画などを見かけるようになりました。

様々な方法がありますが、よく見かけるのは「吠えたら無視」「イタズラや甘噛みも無視」という手法です。

でも、こんなことありませんか?


無視してるのに一向によくならないどころか、悪化してる気がする…。


実はこの「無視」、大きな落とし穴があります。

oluoludogschoolでは現在、この「無視して行動をなくす」という手法は用いていません。

今回はこの落とし穴について解説していきます!


「無視する」の原理



陽性強化トレーニング


落とし穴を解説する前に、無視をすると吠えやイタズラが減るのはどういう原理なのかをご説明します。

ワンちゃんが行動を学習するメカニズムの一つとして、「オペラント条件付け」というものがあります。

本記事では必要な部分だけかいつまんでご説明します。


A正の強化:何かを与えることで行動を強化する(増やす)

きっかけ⇒行動⇒強化子⇒行動が増える

例1 「オスワリ」という合図⇒座る⇒ご褒美がもらえる⇒オスワリの合図で座る

例2 遊んでほしい⇒吠える⇒声をかけられる⇒遊んでほしい時に吠える


B負の弱化:何かを取り去ることで行動を弱化する(減らす)

きっかけ⇒行動⇒弱化子OR何もない⇒行動が減る

例1 遊んでほしい⇒吠える⇒吠えた対象がいなくなる⇒吠えが減る

例2 遊んでほしい⇒吠える⇒何も起こらない⇒吠えが減る


「無視をする」というのはこの負の弱化を繰り返し学習することで成り立つのです。


そして、Aで一度学んだ行動をBの”無視する”で頻度を減らしていくことを動物行動学では消去と言います。

たとえば、「吠えたら構ってもらえた」というAの学習を「吠えても構ってもらえない」と変えていくことです。


無視してるのによくならない!その落とし穴とは?


犬のしつけ

①消去バースト


前項でお話ししたとおり一度強化された行動に対して、何も起こらない(無視する)ことで行動を減らしていきます。

この消去には、必ず消去バーストと呼ばれる期間が存在します


よくある消去バーストでいうと、ハウストレーニングです。

ハウスから出してほしい⇒吠える⇒声をかけてもらえた・ハウスから出してもらえた⇒ハウスから出してほしい時に吠えるようになる

という学習をしてきたワンちゃんがいるとします。


これまで吠えたらサークルから出してもらえたという確信があるワンちゃんに、いきなり無視をしてみたらどうなるでしょう。

今までは出してくれてたのに!!という気持ちから、もっと強く・長く・大きく吠えます。


この現象は人間にも起こります。

たとえば飲食店での呼び鈴。注文をしようと思ってベルを鳴らしても来ない。何度か慣らしてみたり、「すいませーん!」と声を出してみたり、さらに大きな声で呼んでみたり、席を離れて店員さんを探しに行ったり…あれこれ試行錯誤してみて、もし来なかったら店を出ることを考えるでしょう。

そして、そのお店には二度と行かないと思います。


それから自動販売機。お金を入れてボタンを押しても飲み物が出てこない。もう一回お金を入れたり、ボタンを連打してみたり…。色々試した結果、飲み物が一向に出てこなかったらあきらめるでしょう。その自販機ではもう飲み物は買わないでしょう。

リモコンのボタンなんかもそうですね。色々試してつかなかったら、買い替えを検討されるでしょう。


これらは「○○をしたら××が手に入る」という学習がある前提で、それがなされなかったときにあらゆる行動を試します。

この「あらゆる行動を試す」のが消去バーストです。

そして、消去バースト中はこれまでかなっていた望みがかなわないわけですから、いらだちもあります。


そしてこの消去バーストこそが、「無視する」ことの最大の落とし穴です

一時的に行動が強くでるので、飼い主さんは「きかなかった、あわなかった」と思って無視するのをやめたり、あまりにも吠え声が大きすぎて根負けしてしまい、結局ハウスからだしてしまう。

こうすると、ワンちゃんは「このくらい強く長く吠えれば望みが叶うんだ!」とさらに良くない学習をしてしまいます


たとえば、ハウスから出してほしくて吠える⇒30分無視したけど観念して出した⇒次からは30分吠え続ける…この確信が長く続くと、4時間でも5時間でも吠える犬になるのです。


甘噛みの場合:

遊んでほしくて噛む⇒無視される⇒強く噛む⇒無視しきれずに「やめて!」と声をかけてしまう⇒次から強く噛むようになる


イタズラの場合:

暇つぶし・遊んでほしくてイタズラする⇒無視される⇒かみちぎってみたり、振り回してみたりする⇒飲み込むのが怖くて止めてしまう⇒次から噛みちぎるようになる


無視をしたら悪化した、というのは大体この消去バーストを知らずに、「悪化しちゃったから無視をやめよう!」「耐えられないから止めちゃおう」でリアクションをして行動が最大強化されているケースがほとんどです。



②ルールが曖昧


犬 吠える

無視されるときもあれば、構う(止める)ときもあるケースです。

・いつもは無視するけど、あまりにも吠えやイタズラがひどい時や、周囲に人がいて迷惑をかけられないときなど、思わず止めてしまった。

・家族によって無視する人もいれば、構う人もいる

という場合です。


これは「部分強化」といって、より行動を定着させる可能性が高いのです

人間も含めて、変動的に強化子が出るものには、より強く長く行動をとる習性があります。

つまり、ルールが曖昧で無視する・しないが変動的だと、よりその困った行動を強化してしまうのです。


人間でいうとこの部分強化が最大化されているのが賭博・ギャンブル・くじです。

あたるときもあればあたらないときもある。あたったときの強化子が魅力的であればあるほど、ついついのめり込んでしまうというのはこの部分強化によるものなのです。


つまり、構ったり構わなかったりするのは、吠え・イタズラ・甘噛みなどを強化しているのと同じなのです。

一度部分強化スケージュールに入ると消去をするのは難しく、相当な根気と時間がかかると思っておきましょう。


「無視をする」は正しいのか?


冒頭に記載したとおり、oluoludogschoolでは無視…もとい「消去」を用いたトレーニングは行っていません。

消去によって起こる「消去バースト」は犬に多大なストレスがかかります。

本来弱い行動で済んでいたことが、消去バーストによって強い行動を引き起こしてしまうこともあります。

そしてその過程で無視をする飼い主さんにも多大なストレスがかかることも多く見受けられます。


ではどうやって困った行動をなくすのか。

そもそも「困った行動をなくす」という考えを改め、犬がその行動をとる必要がない状況をつくることが大切です。


具体的にいうならば、犬が望むことを充分にかなえてあげることです。

吠えたらこうする、噛んだらこうする、という対処は根本的な解決ではありません。


遊んでほしくて手を噛むのならば、手を噛む必要がないくらい充分に発散させてあげること。

構ってほしくて吠えるのであれば、吠える必要がないくらい構ってあげること。

そしてそんなに吠えたり噛んだりしなくても望みはかなうんだよ、ということを教えてあげること。


では限られた時間と環境で犬を満たすためにはどうしたらいいのか。

執着心の増幅や不安定な情緒にならないように犬の望みをかなえるためにはどうしたらいいのか。

その手法・手段を増やすこと、そして犬が何を求めているのかを見極めるために行うのがドッグトレーニングです。


まとめ


いかがでしたか?

消去(無視する)は正しく用いることで効果を得られる方法ですが、犬にも人にも一時的に負担がかかる手法です。


また、犬にとって大好きなことを要求する行動なのであれば、吠える・噛む・イタズラするといった困った行動の代わりにこうしてほしい、という代替え案を教えてあげるのがよいと思います。

遊びたいなら、甘噛みせずにおもちゃを持ってきてね。

抱っこしてほしかったら、目の前でオスワリをしてね。

など、代わりの選択肢をたくさん教えてあげましょう。


○○しちゃだめ!というのはあくまで人間の都合にすぎません。

お互いにとってハッピーな関係がとれるとよいですね。


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