ワンちゃんが無駄吠えする理由3選とその対処法
- くどう まやか
- 2023年10月13日
- 読了時間: 12分
更新日:7月12日
こんにちは!大阪市福島区にあるドッグスクールoluolu dog schoolの工藤です。
しつけのお悩みのうち、最も多いと言っても過言ではない「吠え」。
今回は、ワンちゃんが吠える理由とその対処法について解説していきます。
もくじ

無駄吠えは存在しない
はじめに、ワンちゃんの吠えのお悩みについて「無駄吠え」と表現されることが多いですが、
実は「無駄吠え」というのは存在しません。犬は何かしら理由があって吠えるのです。
なぜ吠えているのかという理由に合わせた対処をしないと、かえって悪化することがほとんどです。
無駄吠えと一蹴する前に、ぜひこの記事を読んでワンちゃんの心に寄り添ってあげましょう。
また、吠えという行動自体はワンちゃんが本能的に持っている行動の一つです。
「吠えを改善したい」と思っても、改善するのには時間がかかることを心しておきましょう。
そして、本能的に持っているということは完全になくすことはできません。
あくまで緩和や改善であるということを理解しましょう。
ワンちゃんが吠える主な理由3選
要求吠え

「ごはんがほしい」
「遊んでほしい」
「こっちを見てほしい」
「(ハウスから)出してほしい」
など、何かを要求する吠えです。
特に仔犬の時期はよっぽど大人しい子でない限りは要求吠えをします。
吠えたときにワンちゃんにとって得なことがあった、
もしくは望むものを得られたという経験から、大人になっても要求吠えで吠え続けます。
要求吠えの対処法は、「吠えたらどうするか」というよりは「吠えている目的はなんなのか、何が満たされれば吠えないのか」というところに着目し、犬を満たすことでそもそも吠える必要性をなくすことが大切です。
要求吠えの改善方法と注意点:
①「望み」を叶える
誤解を招きそうなので先にひとつ。「吠えたから望みをかなえるようにする」というのが根本的対処ではなく、「何を満たすべきなのか」というところに着目するべきだということです。
oluoludogschoolではこの手法を用いています。
たとえば、ハウスの中で吠えるというお悩みがあったとします。
犬の望みはきっと「出してほしい」でしょう。
その時の犬の望みは「ハウスから出ること」ですが、吠えたらハウスから出すというのは根本的な解決ではありません。
たとえばその犬が、"一日たっぷり遊んだあと、お散歩にいったあとは静かにハウスで過ごしていて、吠えない。”という条件があったとします。
つまり、この犬の望みはハウスから出ることではなく、「満足するまで遊ぶこと」「満足するまで体を動かすこと」です。
もう一つ例をあげてみましょう。
ゴハンの準備をすると激しく吠える、というお悩みがあったとします。
犬の望みは「ゴハンを食べること」ですが、この場合、満たすべきはお腹がいっぱいになることではないかもしれません。
犬という動物が本来持つ食性を考えると、噛みつく、砕く、舐めとる、引きちぎる、高いところから落とす…など、食事をとる時に付随する行動がたくさんあります。
また、食べるものはやわらかいもの、固いもの、野菜、くだもの、お肉、骨など様々な種類が考えられます。
その食性を考えると、ドライフードを食器で食べる行為は不自然で物足りないですよね。
ですのでこのケースは、リックマットや知育玩具を使用して犬の食性に基づいた行動を引き出すこと、やわらかいものや固いものをまぜてあげる、など「あげかた」を変えるだけで食事への執着が和らくことがあります。
注意点:
イメージがしやすいように2つ例を挙げましたが”犬が何を望んでいるのか、何が満たされていればその行動をとる必要がなくなるのか”はその子によって異なります。色々と試してみて何がはまるのかを模索する必要があります。
②無視をする
吠えたら○○がもらえた、という学習をリセットするには、「無視」をするという手法が比較的よく用いられる方法です。
「○○がもらえた」という、ワンちゃんにとって吠えたことへの報酬を取り去ります。
この学習履歴をリセットすることを、行動学では「消去」と表現します。
たとえば、
【ごはんの準備をしているときにワンワン吠えた⇒吠えている間も準備を進めて、ごはんをあげた】
という行動を繰り返すと、「吠えたらごはんを貰えた」という学習につながります。
この学習を積み重ねた場合、ワンちゃんは「吠えたらご飯がもらえる」という確信をもっています。
確信を持った行動をしても急に無視をされたら、「なんで!?」と思うのは自然なことですよね。
そして、この「なんで?」という気持ちから一時的に行動が強くなることを行動学では消去バーストと呼びます。
人間に置き換えて、リモコンのスイッチを押すという行動でたとえてみましょう。
リモコンのスイッチを押したら家電が稼働する、という学習を積み重ね、確信を持っています。
ある日突然スイッチを押しても何も起こらなかったら、スイッチを何度も押してみたり、強く押してみたり、電池を変えてみたり…と様々な行動をとりますよね。
この様々な行動が消去バーストです。
消去バーストが起きているときに我慢できなくなって声をかけたり、しょうがないやといってごはんをあげたりすると、次からワンちゃんはその消去バースト時の強い行動で要求するようになります。
強い行動というのは吠え方、声量だけではなく吠える時間もしかり。
30分吠え続けたところで我慢できなくなって声をかけたら、次からは30分絶対に鳴き続けるようになる…というものです。
そしてこの消去バーストを超えて、行動がなくなるまで無視しましょう。というのが「消去」という手法です。
注意点:
前述した「消去バースト」は、消去を用いたトレーニングに置いて必ずといっていいほど現れます。
しかし、この消去バーストを起こしている犬には多大なストレスがかかっています。
また、本来「一回ワン!と吠える」程度だった行動が、場合によっては「噛みつく・物を壊す」といった攻撃性のある行動に進化してしまう可能性があります。
③止める
吠えるたびに「こら!やめなさい!」「シッ!」など声をかけたり、リードを引いたりして止める方法です。
「吠えを辞めさせるために行っている」というよりは何の気なしに声をかけて止めている方が多いかもしれませんね。
注意点:
たとえば犬の望みが「注目してほしい」「声をかけてほしい」「飼い主ともっと関わりたい!」というものだった場合は、吠えてすぐに返事をする(声をかける)ことで最小限の主張で望みが叶うと学習するケースがあります。
しかし、それ以外の望みがある場合は、かえって吠えが激しくなってしまうこともありますので、万能ではありません。
警戒吠え

知らない人や音、見慣れないものや、お散歩で出会うワンちゃんなどの刺激に対して
ワンちゃんが「怪しい」「怖い」「不安だ」と思う気持ちから吠えることを警戒吠えといいます。
警戒吠えにおいても犬には「目的」や「望み」があります。
吠えることで対象を遠ざけたいのか、あるいは確認したいのか。
ただひとりごとのように「なんだ?!」と言っているだけかもしれません。
確認させてあげられるときは、なるべく確認させてあげること。
遠ざけたいのであれば、離れてあげることや怪しまずに済むよう距離がとれる環境を用意することが大切です。
また、不安な気持ちは「不安を感じやすい精神状態であること」がそもそもの原因となることがあります。
人間もナーバスになっている時期や、体調が悪い時、疲労がたまって余裕がない時など、心の空間が少ない時はちょっとした刺激で過剰に不安になってしまうことがありますよね。
犬も同じで、そもそもメンタルが安定していない状態を改善する必要があります。
警戒吠えの対処法には注意点が二つ
ひとつは「要求吠え」と合併することがあるということ。
知らない人を見て吠えた⇒声をかけたり、抱っこしたりして止めた
という学習は、「知らない人を見て吠えたらパパママがかまってくれる」と学習することがあります。
たとえばお散歩中。静かに歩いているときは何も声をかけてくれないけど、人に向かって吠えたときだけは絶対に構ってくれる。と思ったら、吠えるようになります。
特徴は吠えた後、どこかのタイミングでパパママの顔をみたり、吠えるタイミングが不規則であることです。
ふたつめは、完全になくすことはできないということ。
人間も誰しも、絶対に何があっても受け入れられない怖いものってありますよね。
私(筆者)は高いところがとっても苦手です。それから大きな虫も嫌いです。
みなさんにも一つや二つ、絶対に受け入れられない苦手・嫌いなものがあるはず。
虫が大嫌いな人に、「虫が急に現れても驚いて叫んだりしないで!」「至近距離にいても嫌がらないで!」というのは無理ですよね。
それらに対して「慣れだよ」と言われたり、いくらご褒美を積まれたりしても、
できることなら回避して生きていきたいですよね。
ワンちゃんも同じで、その子によってはどうしても受け入れられないものというのはあります。
警戒心をやわらげることはできても、完全に払しょくすることはできないかもしれません。
飼い主さんに理解していただきたいのは、ワンちゃんが「苦手だ」「嫌いだ」と思う気持ち自体は尊重してあげてほしいということです。
その代わり、そういったどうしても受け入れられないものと出会ったときにパニックにならずに、落ち着いて回避する方法を教えてあげましょう。
衝動(興奮)吠え

最後の衝動吠えが、一番根強い理由です。
衝動吠えとは、興奮しすぎて犬自身も何がなんだかわからなくなっている状態です。中には自分で吠えを止めることができないこともあります。
要求吠えまたは警戒吠えのどちらかと、本人(犬)の興奮状態が合体して起こります。
きっかけは要求だった、きっかけは警戒だった…というきっかけそのものはあっても、吠え始めることで興奮が高まり、自分自身では吠えることを止められない状態です。
よだれがたくさん出たり、目が真っ赤になったり、息切れや動機がとまらなくなったり…、口や足から血が出るほど吠えたり暴れたりするケースもあります。
衝動吠えの場合はそもそも自分でも止められない、学習ができる精神状態ではないので、まずは興奮を抑えるところからトレーニングをしていく必要があります。
興奮を抑制するだけではなく、精神の安定を保った状態での十分な発散、そして深い睡眠がカギです。
また、消去を用いたトレーニング(無意識で行っている場合もあります)によって、消去バーストが衝動吠えに発展する場合があります。
吠え防止のNG対処法
叱る
たとえば、吠えるたびに「NO!」と言って叱る。
これはパパ・ママからすると叱っているつもりが、犬にとっては構ってもらえた、注目してもらえたという誤った受け取り方をされることがほとんどです。
もしも「NO」で吠えが止まったとしても、吠える頻度自体を減らすことはできません。
もしくは、マズルをつかんだり、たたいたり…といった体罰を与える。
こういった手法は昔のトレーニング手法ではよく用いられてきました。つまり、うまくはまれば吠えを抑制する効果を得ることができます。
しかし、効果を得ることはできても強い恐怖で犬の自由を奪ったにすぎません。
吠えという行動のあとに恐怖を与えることで、「刺激や出来事」⇒吠える⇒恐怖という一連の流れが紐づいてしまいます。
最悪の場合、刺激にたいして強い恐怖を覚え、攻撃行動に変化するおそれがあるのです。
仮に吠えという行動が抑止できたとしても、犬に恐怖や痛みを与えることは飼い主様も望んでいないはずです。
大きな音を鳴らす
これも昔はよく用いられていた手法ですが、吠えた後に風船を割ったり、大きく手をたたいたり、食器などを落としたり…大きな音を鳴らして吠えを止める方法です。
吠えると大きな音が鳴る⇒驚くので、吠えたらよくないことが起こると学習して吠えが減るという原理です。
これも叱るのと同様に恐怖が紐づくという副作用を持っています。
また、この手法は「吠えた瞬間に」「毎回必ず」という学習を積まなければ成立しません。
お外で吠えてしまった場合、風船を割るわけにはいかないですよね。
さらにこの手法の前提は、「犬が驚くほどの大きな衝撃」が前提であるため、最初は驚いていてもだんだんと慣れてきて効かなくなることがあります。
その場での即効性はあるため、はじめは魔法のような効果を感じるかもしれませんが、継続して行うには現実的にも不向きな手法です。
犬は吠える生き物だということ

犬の祖先はオオカミです。オオカミは遠吠えをすることはあっても、吠えることはありません。気になるものや欲しいものがあったからといって吠えていては、外敵に自分の身の危険をさらすことになります。
あくまで吠えという習性は、祖先であるオオカミからイエイヌに進化する過程で生まれた行動なのです。
犬種によっては吠えることが仕事だった犬種もいます。
ワンちゃんが吠える大まかな理由3つ(要求・警戒・衝動)をあげましたが、もちろんこれに当てはまらないことや、一見どれに該当するのかわからないケースもあるでしょう。
実際に、特に何か刺激があるわけじゃないけど、体力がありあまっていて暇で吠えるという場合もあれば、先住犬が吠えるからつられて吠える…ということもよくあります。
困っている方の多くは「吠えを治したい」と思うことでしょう。
しかし、犬は本来吠える生き物です。
吠えを完全になくすことは不可能です。たとえあったとしても、もしかしたらそれは犬の心に負荷をかけているかもしれません。
要求吠えのところで解説した「何が満たされれば、あるいはどの環境であれば吠える必要がなくなるのか」ということが根本的な解決につながります。
そんなふうに、犬の心に寄り添った考えを根底に持つことが大切です。
まとめ

いかがでしたか?
吠える理由は要求・警戒・衝動のいずれかです。(該当しない場合もあります)
何度も記述するように、吠えることそのものに着目してどんな対処をしてもそれは根本的な解決ではなく、
・犬を満たし吠える必要性をなくす
・吠えて興奮して自分でも止められない…といった精神状態をニュートラルにする
という考え方が大切です。
いつかこういった考え方が広まって、「無駄吠え」という言葉自体がなくなったらいいなと思っています。
しかしなかなか原因や犬の望みが思い当たらないこともあることでしょう。
学習履歴が長ければ長いほど、その要因は複雑に絡み合っています。
また、その犬の性質(犬種や性格、血統など)によっては一筋縄ではいかないことも。
大阪市福島区のoluolu dog schoolではプロのトレーナーがワンちゃんの様子を見て、具体的な対処法をご提案させていただきます。
ぜひお気軽にご相談くださいませ。