こんにちは!大阪市福島区にあるドッグスクールoluolu dog schoolの工藤です。
しつけのお悩みのうち、最も多いと言っても過言ではない「吠え」。
今回は、ワンちゃんが吠える理由とその対処法について解説していきます。
もくじ
無駄吠えは存在しない
はじめに、ワンちゃんの吠えのお悩みについて「無駄吠え」と表現されることが多いですが、
実は「無駄吠え」というのは存在しません。犬は何かしら理由があって吠えるのです。
なぜ吠えているのかという理由に合わせた対処をしないと、かえって悪化することがほとんどです。
無駄吠えと一蹴する前に、ぜひこの記事を読んでワンちゃんの心に寄り添ってあげましょう。
また、吠えという行動自体はワンちゃんが本能的に持っている行動の一つです。
「吠えを改善したい」と思っても、改善するのには時間がかかることを心しておきましょう。
そして、本能的に持っているということは完全になくすことはできません。
あくまで緩和や改善であるということを理解しましょう。
ワンちゃんが吠える主な理由3選
要求吠え
「ごはんがほしい」
「遊んでほしい」
「こっちを見てほしい」
「(ハウスから)出してほしい」
など、何かを要求する吠えです。
特に仔犬の時期はよっぽど大人しい子でない限りは要求吠えをします。
吠えたときにワンちゃんにとって得なことがあった、
もしくは望むものを得られたという経験から、大人になっても要求吠えで吠え続けます。
要求吠えの対処法は単純に、「吠えたら無視!のぞむものを与えない」というのが大原則です。
要求吠えの改善方法:これまでの学習履歴をリセットする
吠えたら○○がもらえた、という学習をリセットするには、前述したとおり「無視」をするのが一般的です。
「○○がもらえた」という、ワンちゃんにとって吠えたことへの報酬を取り去ります。
この学習履歴をリセットすることを、行動学では「消去」と表現します。
たとえば、
【ごはんの準備をしているときにワンワン吠えた⇒吠えている間も準備を進めて、ごはんをあげた】
という流れがあったとします。
この間、飼い主さんが「こら、静かに!」と声をかけて一時的に静かになったとしても、ワンちゃんからすると「吠えたらごはんを貰えた」という学習につながります。
吠えたらごはんをもらえた、吠えたらごはんをもらえた…
この学習を3年間積み重ねた場合、ワンちゃんは「吠えたらご飯がもらえる」という確信をもっています。
3歳になってから「じゃあ吠えても無視をしてみよう」と思っても、ワンちゃんは確信をもっているわけですから、強く吠えてみたり、長く吠えてみたり…と色々な行動を試します。
確信を持った行動をしても急に無視をされたら、「なんで!?」と思うのは自然なことですよね。
そして、この「なんで?」という気持ちから一時的に行動が強くなることを行動学では消去バーストと呼びます。
人間に置き換えて、リモコンのスイッチを押すという行動でたとえてみましょう。
リモコンのスイッチを押したら家電が稼働する、という学習を積み重ね、確信を持っています。
ある日突然スイッチを押しても何も起こらなかったら、スイッチを何度も押してみたり、強く押してみたり、電池を変えてみたり…と様々な行動をとりますよね。
この様々な行動が消去バーストです。
肝心なのはここで根負けせずに、心を鬼にして堪えること。
消去バーストが起きているときに我慢できなくなって声をかけたり、しょうがないやといってごはんをあげたりすると、
次からワンちゃんはその消去バースト時の強い行動で要求するようになります。
強い行動というのは吠え方、声量だけではなく吠える時間もしかり。
30分吠え続けたところで我慢できなくなって声をかけたら、次からは30分絶対に鳴き続けるようになる…というものです。
ですので、要求吠えの場合はとにかく根気が大切です。
警戒吠え
知らない人や音、見慣れないものや、お散歩で出会うワンちゃんなどの刺激に対して
ワンちゃんが「怪しい」「怖い」「不安だ」と思う気持ちから吠えることを警戒吠えといいます。
警戒吠えの場合は、「不安な刺激」から「不安な気持ち」を取り除く、あるいは緩和させるトレーニングが必要です。
たとえば、知らない人を見たら吠える前にトリーツ(オヤツ)!
これを習慣にすると、知らない人という刺激に対してトリーツをもらったときの嬉しい気持ちが結びついていきます。
吠えはあくまで結果であり、吠えを誘発する刺激に対しての「心」に変化を起こさなければ、行動を変えることはできません。
警戒吠えの対処法には注意点が二つ
ひとつは「要求吠え」と合併することがあるということ。
知らない人を見て吠えた⇒声をかけたり、抱っこしたりして止めた
という学習は、「知らない人を見て吠えたらパパママがかまってくれる」と学習することがあります。
たとえばお散歩中。静かに歩いているときは何も声をかけてくれないけど、人に向かって吠えたときだけは絶対に構ってくれる。と思ったら、吠えるようになります。
特徴は吠えた後、どこかのタイミングでパパママの顔をみたり、吠えるタイミングが不規則であることです。
ふたつめは、完全になくすことはできないということ。
人間も誰しも、絶対に何があっても受け入れられない怖いものってありますよね。
私(筆者)は高いところがとっても苦手です。
それから大きな虫も嫌いです。
みなさんにも一つや二つ、絶対に受け入れられない苦手・嫌いなものがあるはず。
それらに対して「慣れだよ」と言われたり、いくらご褒美を積まれたりしても、
できることなら回避して生きていきたいですよね。
ワンちゃんも同じで、その子によってはどうしても受け入れられないものというのはあります。
警戒心をやわらげることはできても、完全に払しょくすることはできないかもしれません。
飼い主さんに理解していただきたいのは、ワンちゃんが「苦手だ」「嫌いだ」と思う気持ち自体は尊重してあげてほしいということです。
その代わり、そういったどうしても受け入れられないものと出会ったときにパニックにならずに、落ち着いて回避する方法というのを教えてあげましょう。
衝動(興奮)吠え
最後の衝動吠えが、一番根強い理由です。
衝動吠えとは、興奮しすぎて犬自身も何がなんだかわからなくなっている状態です。
要求吠えまたは警戒吠えのどちらかと、本人(犬)の興奮状態が合体して起こります。
きっかけは要求だった、きっかけは警戒だった…というきっかけそのものはあっても、吠え始めることで興奮が高まり、自分自身では吠えることを止められない状態です。
よだれがたくさん出たり、目が真っ赤になったり、息切れや動機がとまらなくなったり…、口や足から血が出るほど吠えたり暴れたりするケースもあります。
衝動吠えの場合はそもそも自分でも止められない、学習ができる精神状態ではないので、まずは興奮を抑えるところからトレーニングをしていく必要があります。
興奮を抑制するだけではなく、精神の安定を保った状態での十分な発散、そして深い睡眠がカギです。
吠え防止のNG対処法
叱る
たとえば、吠えるたびに「NO!」と言って叱る。
これはパパ・ママからすると叱っているつもりが、犬にとっては構ってもらえた、注目してもらえたという誤った受け取り方をされることがほとんどです。
もしも「NO」で吠えが止まったとしても、吠える頻度自体を減らすことはできません。
もしくは、マズルをつかんだり、たたいたり…といった体罰を与える。
こういった手法は昔のトレーニング手法ではよく用いられてきました。つまり、うまくはまれば吠えを抑制する効果を得ることができます。
しかし、吠えという行動のあとに恐怖を与えることで、「刺激や出来事」⇒吠える⇒恐怖という一連の流れが紐づいてしまいます。
最悪の場合、刺激にたいして強い恐怖を覚え、攻撃行動に変化するおそれがあるのです。
仮に吠えという行動が抑止できたとしても、犬に恐怖や痛みを与えることは飼い主様も望んでいないはずです。
大きな音を鳴らす
これも昔はよく用いられていた手法ですが、吠えた後に風船を割ったり、大きく手をたたいたり、食器などを落としたり…大きな音を鳴らして吠えを止める方法です。
吠えると大きな音が鳴る⇒驚くので、吠えたらよくないことが起こると学習して吠えが減るという原理です。
これも叱るのと同様に恐怖が紐づくという副作用を持っています。
また、この手法は「吠えた瞬間に」「毎回必ず」という学習を積まなければ成立しません。
お外で吠えてしまった場合、風船を割るわけにはいかないですよね。
さらにこの手法の前提は、「犬が驚くほどの大きな衝撃」が前提であるため、最初は驚いていてもだんだんと慣れてきて効かなくなることがあります。
その場での即効性はあるため、はじめは魔法のような効果を感じるかもしれませんが、継続して行うには現実的にも不向きな手法です。
犬は吠える生き物だということ
犬の祖先はオオカミです。オオカミは遠吠えをすることはあっても、吠えることはありません。気になるものや欲しいものがあったからといって吠えていては、外敵に自分の身の危険をさらすことになります。
あくまで吠えという習性は、祖先であるオオカミからイエイヌに進化する過程で生まれた行動なのです。
犬種によっては吠えることが仕事だった犬種もいます。
ワンちゃんが吠える大まかな理由3つ(要求・警戒・衝動)をあげましたが、もちろんこれに当てはまらないことや、一見どれに該当するのかわからないケースもあるでしょう。
実際に、特に何か刺激があるわけじゃないけど、体力がありあまっていて暇で吠えるという場合もあれば、先住犬が吠えるからつられて吠える…ということもよくあります。
困っている方の多くは「吠えを治したい」と思うことでしょう。
しかし、冒頭で前述したとおり、犬は本来吠える生き物です。
吠えを完全になくすことは不可能です。たとえあったとしても、もしかしたらそれは犬の心に負荷をかけているかもしれません。
・吠えるきっかけである「刺激」や「出来事」に対する気持ちを変える
・「吠える」という仕事の代わりに、他の仕事を提案する
・吠えない方がいいことがある!と伝える
そんなふうに、犬の心に寄り添った考えを根底に持つことが大切です。
そのうえで原因に合わせてどんな風に学習を積んでいくかを試行錯誤していきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
吠える理由は要求・警戒・衝動のいずれかです。(該当しない場合もあります)
吠えに対しての対処は
・吠えるきっかけである「刺激」や「出来事」に対する気持ちを変える
・「吠える」という仕事の代わりに、他の仕事を提案する
・吠えない方がいいことがある!と伝える
という考え方が大切ですとお伝えしました。
いつかこういった考え方が広まって、「無駄吠え」という言葉自体がなくなったらいいなと思っています。
しかしなかなか原因が思い当たらないこともあることでしょう。
学習履歴が長ければ長いほど、その要因は複雑に絡み合っています。
また、その犬の性質(犬種や性格、血統など)によっては一筋縄ではいかないことも。
大阪市福島区のoluolu dog schoolではプロのトレーナーがワンちゃんの様子を見て、具体的な対処法をご提案させていただきます。
ぜひお気軽にご相談くださいませ。
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